2015年02月27日

Who cast a spell? 〜アニメ アイドルマスター シンデレラガールズ7話感想(前半)

アニメアイドルマスターシンデレラガールズ7話は高雄監督の絵コンテ回でした。1話をリフレインをしているのは両話を見比べると分かるのですが、すべてが同じという訳ではありません。その非対称の部分を比較しつつ、もう一つ7話で大事だったと思う「動きの方向」についても注目してみたいと思います。

動きの方向について
上手下手への動きにはその立ち位置と同様の意味があります。詳しくは以下のブログ記事にあるとおりです。
ゲームの右と左 マリオはなぜ右を向いているのか
高雄監督も画面左である下手への動きと画面右である上手への動きにも明確に意味づけを行っているように思われます。7話冒頭のイメージカットと、7話エンディング後のCパートのカットを比べてみます。
inyou2.jpg
7-1.png
Pの元を去って行くシンデレラ達。上手に向かって走り去ります。これは1話で凜に最初に声をかけてすげなくされたカットと同じ方向です。
7-2.png
未央、凜、卯月が改めて第一歩を踏む。下手に向かっています。
このように、高雄監督は左→右の動きはネガティブに、左←右動きはポジティブに捉えているようです。このことを踏まえ、7話の「感想」を述べたいと思います。

未央とプロデューサー
まず未央とプロデューサーの置かれている状況を端的に表しているカットを二つ。
7-3.png
画面右側に去ろうとしているPを画面右側に置き、距離を置いて画面左側に凜と卯月を置いています。人物の背後にある空間は、その人物が背負っているものを暗示させます。アニメアイドルマスター劇場版で春香が「私は天海春香だから」と言ったあのシーンも不自然なまでの空間が背後にありました。Pの背後に今あるのはかつての失敗であり、凜や卯月に全く目が向いてない事がこの1枚で分かります。
7-4.png
テーブルの下からのぞき込むような構図。下はベッド、上はテーブル、左は本箱、右はクッション。開いているのはカーテンが半ば閉じられた窓だけ。客観的に見れば成功だったミニライブを失敗としか捉えられない未央の、にっちもさっちも行かない状況が分かります。

このようにこの2人はお互いどころか、現状さえ全く目に入っていません。そんな2人が合えばどうなるか。
7-5.png7-6.png
7-7.png7-8.png
7-9.png7-10.png
画面右を向いて左側に開く膨大な空間。2人とも同じ方向を向いて、構図上でさえ向かい合っていません。インターホンに向かって互いの主張を繰り返すだけでコミュニケーション以前の問題です。

凜とプロデューサー
inyou7.jpg
7-11.png
このカットは1話のリフレインになっています。初めて凜がプロデューサーとまともに話をした時は2人の距離は縮んでいました。違うのは凜が立っていること。動こうとしないPに不信感を抱いた凜が距離を置いています。
7-12.png
7-13.png
画面右側に立つ凜が画面左側にいるPを糾弾し、ついには画面右上から見下ろし、Pを画面左下追いやってしまいます。1話について書いた記事で、シンデレラガールズにトミノ式は当てはまらないと書きましたが、このシークエンスに限り当てはまってしまいます。凜はコンスコン隊のリックドム12機を無双しそうな勢いです。対決もコミュニケーションの一つとはいえ、ここまで一方的ではコミュニケーションとはほど遠い言わざるを得ません。
逆に言えば、年端もいかない少女にここまで追い込まれてしまうほどに、彼の問題は深刻であるという事だと思います。部長がメンバー達に語って聞かせたように、彼は過去に何人かのアイドルに去られています。その後、そのプロジェクトがどうなったのかについては語られていませんが、彼が担当から外れているのは確かです。
彼を担当から「外した」上司にしてみれば、ドライに言えばリソースの再配分、ウェットに言えば彼の回復と成長を待つ時間を作ったに過ぎず、そこに懲罰的意味は無かったはずです。事実彼はシンデレラプロジェクトを任されているのですから。
ですが担当を「外された」Pはそれをどう受け取ったか。自分のミスにより仕事を外された時、ある人はキャリアが傷ついたと思い、将来に不安を覚えるかも知れません。ある人はプライドが傷つけられたと感じ、恥をかいたと怒りを覚えるかもしれません。そして実直だというこのプロデューサーは、少女達のプロデューサーとして責任を全うできなかった不甲斐なさに、己を呪ったのではないでしょうか。自らを車輪と規定するそのあり方こそが、彼が過去にとらわれていることの現れであるなら、未央との一件がなくとも、破綻はいずれ訪れていたと私は考えます。
7-14.png
去って行く凜。ここで凜が画面右では無く、左に向かうのは上記した原則から見ると不思議でした。ただ、1話のリフレインである凜の私室のシーンでこの方向の理由は想像できます。

凜はまだPを見限った訳では無いのです。だから彼から離れていったアイドルと同じ方向に行かせる訳にはいかなかったのだと思います。

7-15-2.png
凜が去って行く直前にあるこのカットには、凜が去って行く姿は描かれていません。効果音だけです。このカットはあくまでPの心象であり、凜はまだ彼を信じたいと思っているのです。


卯月とプロデューサー
inyou3.jpg
7-16.png
ここも1話のリフレインです。ダイニングキッチンに一番近い、およそ客が座る席ではないソファに座るプロデューサーは相変わらずですが、卯月はずいぶんと距離を縮めています。同じ空間すら共有しなかった未央、距離を取った凜との違いが際立ちます。ここから始まる2人の会話を追ってみてみましょう。
7-23.png
Pの体調を気遣う卯月。卯月を見舞ったハズのPが逆に気遣われている事から、Pは卯月の事がまだ視界に入っていない様子と、卯月はPをしっかり見ている事がうかがえます。
7-24.png
Pが目をやったデビューCDに卯月も目をやっています。卯月はPと同じものを見ようとしています。そして話題を切り出します。「私たちこれからどんなお仕事をするんでしょう?」
7-25.png
卯月は未来を話題にしました。もちろんPが今、過去にとらわれている事を卯月は知りません。ですがPにとっては結果として乗りやすい話題でした。
「島村さんは、今後どうなりたいとお考えですか?」
その問い自体はそれほど重要ではありません。ここで大事なのは卯月とPにコミュニケーションが成立しているという事です。
7-26.png
卯月は夢が次々叶っていることをPに答え、テレビに出たいと希望を伝えます。ここで彼ははっとしたような表情になります。卯月が機会をずっと待っていた少女であることは、Pも知っているハズです。1話で分かるとおりPは表現力に乏しくとも想像力は十分にある人物です。彼は己の過去ではなく、卯月の未来に思いをやり、そして現状が卯月の未来に沿っていない事に気づいたのではと私は思います。
7-17.png
7-18.png
そして卯月はミニイベントの話題を切り出します。Pは卯月が、未央や凜そしてラブライカが告げた不満や迷いを漏らすのだろうと身構えます。ですがそこから出てきたのは思いもがけない、やはり未来に向けた言葉でした。
7-19.png
7-20.png
「次はちゃんと最後まで笑顔でステージに立ちたいな」
そもそもPが卯月の自宅を見舞った心理については、画面上、構図的にも手がかりらしきものはありません。なので妄想でしかないのですが、Pは卯月もまた自分の元を去って行くのではと不安になったのでは、と思います。ですが卯月は未来を口にしました。この言葉は卯月と過去に去って行った少女達とは別人であることを示しPに過去を断ち切らせ、未来を指し示しました。
そもそも今回のトラブルの原因は、同じものを見ていた筈なのに思っていることは別だったという「見解の相違」でした。しかもその見解の相違は未央だけでなく、実は卯月とも起きていたという事になります。もしかしたら卯月ともちょっとした言葉の行き違いでトラブルになっていたかもしれません。ですがそれはきちんとコミュニケーションを取ることでむしろ彼の背中を押す魔法となりました。
構図的には1話の公園での凜と卯月のシークエンスのリフレインで、右に座る卯月、左に座るPという形です。今まで緊張感のあるカットが多かったのですが、このシークエンスは自然な感じがします。Pにコミュニケーションを取らせるためにそれが必要だったのでは無いでしょうか。そして1話で凜が心動かされたように、7話ではPが動きだします。

後半に続きます
posted by tlo at 04:04 | TrackBack(0) | 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/114338311

この記事へのトラックバック