2015年04月23日

10cmの背伸び 〜アニメ アイドルマスター シンデレラガールズ 13話感想 後半

後半に入る前に、13話について指摘しておきたい点が一つあります。

【デレマス13話】笑顔の裏に潜むもの――その時美波は何を思っていたのか?

私も13話は「結構大味」だという感想には同感です。病室の新田さんについても、恐らく何か忘れていると前半記事で書きました。初見だったらそれ程気にはならなかったことも、感想を書こうと見れば見るほど不明な点が出てくるという点で、アニデレらしからぬ回だったと思います。私が特に引っかかったのは、ここの一連のカット。
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さて、ニュージェネレーションは蘭子のフォローもせずにどこにいたのでしょう?

もちろん、カットにこそ無いですがどこかで何かしていたのではという話は出来ます。ですが、アニデレはみりあが蘭子の言葉を理解していた例を見れば分かるように、何かあればそれはキチンと描写をしてきたアニメです。まして、ここは「新田さんが12話で築いたチームワークが回り回って新田さん自身を助ける」という流れで来ているのに、ニュージェネレーションだけがGOIN'の全体練習以外に姿が無いというのは、筋としても通りません。後半はそこの所を妄想で補完しつつ、感想を書いていきます。

・智絵里の危機
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新田さんが倒れた件で、本人を除けば一番ショックを受けているのは智絵里です。目の前で人が倒れたというだけで智絵里で無くても十分に動揺してしまう状況ですが、智絵里にはそれだけでは済まない衝撃でした。
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蘭子のステージを固唾を呑んで見守るメンバー。メンバー全員がモニターを見ていますが、かな子だけは体を智絵里に向けています。そしてなにより、杏が智絵里の背中に手を回しています。誰かをフォローするにしてもそれとなくさりげなくだった杏がこれほどまでに直接的な手段に訴えているのは1期を通じてここだけ。どれだけ智絵里が危機的状況だったのかが知れます。

CandyIslandはかな子と杏が1人では何も出来ないと言う智絵里をフォローする形ができあがっています。しかもただフォローするだけではなく、フォローする為に2人とも実力以上のものが引き出されるのは9話で見たとおりです。少女ファイトを知ってる人なら、黒曜谷バレー部と似た状態といえば分かりやすいかと。
ですが、智絵里は自分がフォローされているという事に負い目があります。しかも杏とかな子がフォローすればするほどその負い目は深くなるという、危険なスパイラルを孕んでいるのがこのユニットです。9話では2人のフォローに応えようとする智絵里の奮起がありましたが、まさにその9話で自分のように倒れた新田さんに、9話でかな子や杏がしてくれたように智絵里は出来ません。それどころか今回も杏とかな子の手を焼かせてしまいました。彼女が泣いているのは、自責と無力感ゆえです。裏返せば智絵里は、なりたい自分を持った理想の高い子なのかもしれません。

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「自分に出来る事をちゃんとやらないと」
杏とかな子のフォローの甲斐あって、智絵里が前を向きます。杏が出来る事だけでいいんだよと視点を変えてあげて、かな子が励まします。CandyIsland必勝の継投パターン。そして未央がCandyIslandに呼応するのですが……

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ですが「自分に出来る事をやる」といってもNGは最初から自分達のステージをリベンジと称して、やる気満々でした。やる気が過ぎて空回るぐらいだった筈です。しかも蘭子が出来る事以上の事をしようとしていて、皆が自分に出来る事でフォローをしているのに、上記したとおりNGだけがその描写がありません。
NGの3人には自分達のデビューイベントのリベンジだけが問題だったという誤読さえ可能で、12話から繋いでいたチームワークというテーマが此処で切れて、ニュージェネのリベンジという別テーマの話が始まってしまってるようにも見えてます。

・ニュージェネレーションは何処にいた?
ではNGは何処で何をしていたのか。その辺一切描写が無いのですが一番妥当な想像は「GOIN'のフォーメーションを全体練習前に詰めていた」という辺りかなと。唯一NGが描写されていたのはGOIN'練習のカットでしたし、12話でも分かるとおり全体曲の練習で皆を引っ張っていたのは空回り気味とはいえ未央でした。ただ、その未央ですが一つ気になる描写があります。
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「でもまだ雨降ってるね」
智絵里の言葉に未央は表情を曇らせます。表情を変えない杏はともかく、何はともあれフェス再開を喜んでいる様子のかな子や凜、卯月とは対照的です。この後の出番はNG。雨中というだけでは無く、先輩達が暖めたステージは冷え切り、デビューして間もない彼女達を見に来るファンも多くは期待できません。リベンジどころではないバッドコンデション。NGが困難な状況に居る事に気づき智絵里はすぐに謝罪します。未央は平気だと言ってみせていますが、一番不安に思っているのは未央本人であることは明白です。
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やはり、未央には自分達のステージで頭がいっぱいなのではないでしょうか。智絵里が何も出来なかったことを吐露するこの場面も、未央は凜や卯月と表情が違います。凜と卯月は口を開けどう反応していいのか分からない様子ですが、しっかりと口を結んだ未央は智絵里の言葉を受け止めているというように私は感じます。凜と卯月は何に戸惑っているのか。私のtwitterのTLにこのような指摘をする方がおられました。

「誰かが「がんばる」と、誰かが「がんばらなかった私」になる。
                    その陰を担っているのが智絵里だ」

智絵里は誰もが感じていた負い目を代弁し、凜と卯月は言われて気づいた。そして未央は自分達のステージが一番大事だからこそ、蘭子とアーニャのステージの成否に気を回せない自分に気づいていた。「私はデビューイベントのリベンジで一杯。大体、ラブライカは同時デビューだったのに、順調に仕事が増えていたじゃないか。私達は他のメンバーの仕事を見に行ける程暇だったのに。余計な仕事を増やす余裕は無い、でも……」とここまでは踏み込みすぎですが、智絵里の言葉を受け止めた上で何かを考えている事までは間違いは無いでしょう。こうして踏め込める隙が13話にはあります。

・ニュージェネレーションに繋がったもの
未央だけ違う微妙な表情。その裏にどんな心理があるのかは実際は描写が無いので分かりません。ただ、この後のライブ直前のシーンで、何故C.I.とNGのシーンが必要だったのかは分かります。

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Pに客が少ないと告げられて、腕組みをしておどけてみせる前に一瞬見せるこの表情。未央は杏のように道化にはなりきれません。彼女は基本真面目で、やはり今日のステージにはどこまでも不安がつきまとっているようです。今C.I.における智絵里ポジションにいるのが未央です。

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Pはお客が戻りきってないとだけ伝えました。ですがこの状況になるとNGには、後に続くCPパートの切り込み隊としての役目がある筈です。冷え切った場を暖め、次のC.I.、凸、*そしてGOIN'まで繋げる重要な役割。フェスに参加するだけにしたくないと合宿で全体曲まで課したPが、ここではNGに最低限の事実しか伝えません。Pもそこまで期待できないと判断する程のバッドコンデションなのでしょう。

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「でも、やるしかない」
智絵里の言葉はここで繋がります。未央にC.I.とのやりとりを思い出させる凜は、C.I.の杏ポジションに今います。そして凜の言葉にのる卯月はかな子のポジションです。おしりの安定感ならかな子にも負けません。

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もう逃げない。自分達に出来るだけの事をするしかない。未央の不安が勇気に変わります。智絵里の小さな勇気をユニットの原動力にするC.I.の必勝パターンが、NGをこの困難なステージに上げます。12話で互いのやり方の違いで衝突したC.I.とNGがここでつながり、テーマ的にもストーリー的にも新田さんの復帰への円環がここに完成するのです。
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あるいは未央も切り込み隊というNGの役割まで考えが及んでいたのかもしれません。智絵里の告白で口を結んでいたのも、自分が何とかしなければという気負いがあったと解釈も出来そうです。ただ未央は気負えば気負う程から回るという悪い癖があります。「自分のことだけでいいんじゃん」という杏の言葉は、そんな未央にも向けられていた可能性を指摘すれば、杏は持ち上げすぎだ営業妨害だと文句を言いそうですが。

・10cmの背伸び
実はこのブログでアニデレの記事を書くに辺り、成長という言葉は避けてきました。アニデレにおける成長とはどういう事柄を指すのか、私自身が見失ってしまう恐れを感じたのが理由の一つ。もう一つは、私自身成長とは何かという事を厳密に考える必要が有った為です。成長という言葉には善悪の価値観が含まれます。私の価値観を無自覚に作品に投影するのは避けたかったのです。「甘ったるい成長物語に酔いしれ、我を忘れた」と愚地独歩も反省しています。ただ、ここまで来ればアニデレ世界における成長の定義はできるかと思います。

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アイドル達には、劇中ではPが持ってきた仕事として、作劇としては思いもかけぬ試練として、常に昇るべき階段が用意されていました。しかもその階段は段差が高く、背伸びをしないと届きません。その階段を自分の選んだ道として、その背伸びを自分の意志として己のものとした時、彼女達の前に新しい景色が広がります。

ですがその成長は劇的なものではありません。例えばチームワークは描かれましたが、自己犠牲に基づく価値観の称揚は、新田さんが倒れたように明確に否定されています。もちろん蘭子は新田さんに恩返しをしたかった筈で、智絵里も自分が何も出来なかったと泣きました。ですが最後に描かれたのは「自身が出来る事をする」という非常に個人主義的な価値観のあり方です。

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しかもその成果は、ライブ成功という達成感ではなく、それが及ぼす社会的成功でもなく、ファンレターという形で描写されています。ライブ後のこのシーンは、24分の枠の中で4分という尺が割かれています。出来るだけの事をしてきた自分達を振り返って、噛みしめるのに十分な尺を雄監督は彼女達に用意してあげたようにも思います。

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そして凜は自分の見た景色にこう感想を言います。「楽しかった、と思う」と。
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「あなたは今、夢中になれる何かを、心動かされる何かを持っているだろうかと」
1話でPのセリフをバックに描かれているのは、高校で部活に励む生徒達です。凜にとっては恐らく、この彼女達の部活と、自身のアイドル活動は等価の「夢中になれる何か」です。346プロのお城のようなビルや華々しい芸能界、ライブで働く多くのスタッフや自分達の為ペンライトを振るファン、その背後で動いているであろう巨大なマネー...凜の視点はそうしたマクロに向かわず、ミクロなあまりに個人的なものです。劇場版アイドルマスターでそうしたすべてを背負い込んだトップアイドル天海春香と比べてもあまりに小さく、まさに10cmの背伸びと言うしかないささやかさですが、これこそがアニメアイドルマスターシンデレラガールズにおける成長ではないかと思います。

ここから「私たちに必要なのも10cmの背伸びで、見慣れた日常にだって新しい世界は広がるんだよ」と言う作品のメッセージも読み取れそうですが、まだ二期が残っています。凜の物語もまだ続くでしょうし、13話でクローズアップされた感のある智絵里も恐らく二期に何かが待っています。かな子の作画は二期になっても安定しないでしょうが、何より、卯月については1話から何も語られてないに等しい状態です。彼女達に何が待っているのか。正直ファフナーEXODUSニ期並にヤバいんじゃないかとか不安もありますが、二期が楽しみです。
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posted by tlo at 18:43| 日記