2010年05月05日

プロデューサーの消失


わかむらP作品

ある動画が広く受け入れられるにはそれ自体のクオリティだけではどうにもならない部分があって、時代とか潮流とか外的要因は思っている以上に大きい。
わかむらPがアイドルに「あなたの操り人形じゃない」と言わせても、それはわかむらP一流のエンタテインメント以上の捉えられ方はしなかったように思える。少なくとも「GAME」のような議論は起きなかった。わかむらP自身もブログで「ニコマスは成熟したジャンルなんで、そろそろこういう毒のあるMADも許されるかなと思って作ってみました。」と書いてあるが、この主題が孕む毒を理解するには、作った側も見る側もまだ早かったと、今になれば思う。
L4Uの七夕コマンドは、バンナムのニコマスP達への明確なメッセージだった。そもそもブルーバックがPVを作るためのスタジオセットなのだから、エスパーでも何でもなく「MADPVを作って遊んでください」という事だったのだと思う。その後もMA曲のDLCが続き、公式側からの素材供給は続いた。
だがその一方で、ゲーム世界内での「P」の存在感は薄くなっていった。SPのストーリーモードは961プロというプロデューサー制を否定する「悪役」が用意された。アイドルを道具と見なす黒井社長によって美希も貴音も響も最終的には潰され、アイドルと二人三脚の765プロの優位が示されるのである。だがその実、961プロの「アイドルによるセルフプロデュース」体制が否定されている訳ではない。961プロは才能があるアイドルには、ハード面で十分な支援が与えられていたし、プロデューサーはいないがマネージャーのようなスタッフは揃っていた。もし、黒井社長がアイドル達に無用のプレッシャーを与えずに、彼女たちの実力が十分発揮されていたとしたら結果は分からなかったと思う。DSに至ってはPがいない。絵理ルートに尾崎Pという登場人物はいるもののあくまで脇役であり、絵理が成長した終盤はPとしてはいてもいなくてもいい状態になる(らしい)。
素材的にもSPはMADPVには魅力的でなかった。L4UのDLCは2009年8月で終了し素材供給が途絶える。DSに至ってはまっとうな手段ではキャプチャーさえ出来ない。響も貴音も愛も絵理も涼もどんな魅力的であっても、今までのように(MADPVを作って)プロデュースが出来ない。

ニコマスP(PV系)は公式世界からしめ出されたのである。


ナファランP作品
ナファランPの作品が衝撃を持って受け止められたのは、一つには「Pが閉め出された」という意識があるのでは無かろうか。もちろん「エレクトロワールドから続く電子偶像動画の系譜」の最先端として見ることも出来よう。だが「アイマス2」の発表を控えたP達の不安を先取りした動画として見た方が、自分にはしっくりするのだ。

……というか今日、その事に気付いて記事を書いているのだけれどw 個人的には、ニコマスに動画を上げるのにHD素材が必須かと言われればそんなことはなくて、MMDやら手描きやらと同じ「画材」だと思います。SPしか素材がなければそれでどうにかするし、DSがどうしても必要であればなんとかする……ただ、労力をもっと別の所に割けたいので素材面で楽したいのだけれど。
posted by tlo at 17:25| 動画紹介

2010年05月02日

カクテルDS

とにかく完成度の高い作品が多かったこと。3-Eに至っては投入された技術、そしてその映像に驚かなくなっていた事にきづいて驚き。というわけで、カクテルDSで5選をしてみました。


お茶P
浮遊する感覚。心地よい映像美。


かきP
映像で語る。かきPにはもうかき字幕が要らないんだと思った。


しょじょんP
音と光と美希が一緒に踊るんだよ、とってもステキな奇跡だよね。


つかさP
(*´Д`*)


メカP
そろそろ菊地真というアイドルのポジション確認が必要と思われる。


楽しかったです。
posted by tlo at 23:10 | TrackBack(0) | 動画紹介

2010年04月11日

ひまわり少女2


junP作品

あずさメドレーの影に隠れてしまった形になってしまったのですが、これもすごかったです。何がすごいって、無駄カット一切無しだと言う所。一カット一カット相当工夫が凝らしてあります。とりあえず、まずは見てください……

熱いですね。すごく感情が動かされます。

というわけで以下、junPが抱いたであろう熱がいかに効率よく伝えられているか
・モーションとカット
・色調
・マイム
・構図
という4点で、この作品を分析してみようと思います。

↓つづく
posted by tlo at 16:38 | TrackBack(0) | 動画紹介

2010年02月17日

音ゲー曲と情報量



動画を見た後の満足感にはいろいろと要因はあるけれど、その中の一つに情報量があると思う。今行われているMMD杯に上げられている動画はどれも情報量が半端無い。いままでに作られてきた膨大なユーザーモデルや素材がMMDの情報量を源泉だ。
この作品に使われている音楽は、jubeatという音ゲーのものだ。音ゲーの曲というのはどれも2分以内で終わるため、映像を詰め込む器としても曲自体も情報量が足りなさげだ。
それでも満足感を得られるようにする為に、情報の並びを工夫する=構成を練る事になる。やみくもに情報を詰め込むよりは効果的だし、場合によっては情報量(素材)はそれほど用意しなくて済むかもしれない。この作品もきちんと考えられている。そしてニコマスならつかさPが抜群にうまい。


つかさP作品

逆に情報量を減らしてミニマルな表現を試みるアプローチも有りそうに思える。だけどこの方向性は映像の情報を減らしたぶん、音に情報量を求めることになるので曲が限られるし、尺も短いので同じ映像を繰り返してトランスを誘うのも難しい。


ASFP作品

やっぱりこういう方向性の方が華やかで「アイドルのPV」っぽいかなとは思う。
posted by tlo at 22:56 | TrackBack(0) | 動画紹介

2010年02月03日

2010スタイル

動画編集ソフトVideoStudio9が無償提供されてなければニコマスはここまで大きくなっていなかったろう。それなりのスペックのPCがあればタダで、いつも見ているあの動画みたいのを作れるというのはやはり魅力的だと思う。そして無償提供が終わった後、より豊かな表現を目指してより高度により高価な有償編集ソフトにP達は乗り換えていった。だけどそんな「技術のインフレ」も世相を反映してか落ち着いたように見える。もちろん3A07のような化け物は出てきているけれど「ダウンサイジング」が進んでいる気がする。
それを支えているのがフリーウェアの高度化で、例えばMMDはもはやSPモデルの上を行っている。そしてこの2作は共にWindows Movie Maker(以下WMM)とAviutlというフリーソフトによって作られている。


(ゆウゆ)P作品


海月P作品

WMMはwindowsにデフォルトでついている動画編集ソフトで、結婚式で流れるような「新郎新婦の生い立ち動画」ぐらいは作れてしまえる。だが高度な編集、例えば「音の速さにあわせて動画の再生速度を調整する」というアイマスMADの基本技術をWMMでは扱えない。が、プラグインを導入すれば限定的であるがそれは可能になる。
Aviutlは個人で開発されているフリーウェアで、CMカットのような簡単な切り貼りは可能であるものの高度な編集には不向きだった。それもプラグインを導入すれば扱えるタイムラインが増え、動画だけではなく静止画やテキストまでも扱えるようになり表現の幅が格段に広がる。
この二つのフリーウェアを使った海月Pの動画製作記事もブログに上がっている。 

『恋にご用心!』の解説のようなもの

実のところWMMとAviutlの機能拡張プラグイン自体はもう2年前に発表されている。2010のこの時期に開発環境が同じ作品が発表されたのは、海月Pが述懐している「二年の歳月」が大きい。WMMとAviutlは当然有償のソフトに比べれば機能に劣る。が、使い方によっては十分見栄えのする作品を作れる。つまり「編集技術」が上がっているという事だ。これは海月P個人というよりはニコマスP全体に言える事で、そんな作品を見てきた(ゆウゆ)Pがいきなりここまで作れるのも不思議ではないと思う。
以上、最近のおもしろい動きについて考えてみた。で、もし動画編集に興味を持たれたらこちらをのぞいてみてはいかがだろうか。

今夜もいおりん放送 初心者がPV作りながらリクエスト枠

↓つづく
posted by tlo at 22:59 | TrackBack(0) | 動画紹介

2010年01月31日

2009下半期20選まとめ





まずは卓球Pを始めとする運営の方々お疲れ様でした。で、詳細についてはあちこちのブログで紹介されておりますので、そちらをご覧くださいw

ライオンとエピローグについて、たくさんの方に選んでいただきました。集計前にかなり選んでいただいたのは気づいてましたが、こうして数字を見ると改めて驚いている次第です。MA66より多かったのか…とか。

本当にありがとうございました。

今、PCが壊れたりといろいろと動けない状況なのですけれど、楽しい動画を作るという形でまたお返ししたいと思っています。
posted by tlo at 20:31 | TrackBack(0) | 動画紹介

2010年01月30日

静止画MAD

静止画MADも独自の進化を続けていて、ニコマスと同様AEを使った作品も増えています。前年末に上がったこちらを見た方も多いはず。静止画MADを見たこと無いという方も、こちらを見て雰囲気をつかんでいただければ。



で、そんな静止画MADの生放送がありまして、

あなたが選ぶ静止画M@D大賞2008

こちらのマイリストと2009年の作品をピックアップして延々3時間20分。正直途中で飽きるかなと思っていたのですけど静止画MADも抜きが普通になっていて、AEどころか3Dまで導入されている作品があり全体的に表現力が上がっていまして最後まで楽しめました。ニコマス以上に素材が限られているので、いろいろな工夫もあって面白いです。以下、5つほどピックアップしてみました。
↓つづく
posted by tlo at 21:27 | TrackBack(0) | 動画紹介

2010年01月02日

下半期20選


2009下半期ニコマス20選に参加します。

基本レギュレーション
・対象は2009年下半期(7月1日〜12月31日)に公開されたニコマス作品
・自身のセレクトを20作品以内でブログもしくはマイリストにて公開
・1Pにつき1作品
・選考基準はフリー(お気に入り・埋もれ発掘・テーマに沿って等何でもオッケー)

今期はマイリス方式にて



よろしくお願いします。
以下、入れたかったけれど漏れてしまった作品をいくつか

↓つづく
posted by tlo at 00:37 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年12月18日

ダンスを選ぶ


チヒロP作品

アイマスMADを作る時、いつも頭を悩ませるのはどのダンスを選ぶかである。普通は曲のBPMに近いダンスが選ばれるのだが、そこには個人差があってそれがまたニコマスの妙味となる。そして今回のチヒロPの新作も使っているダンスに注目すると面白い。

LUV1.png
ふるふるフーチャー「ずっと見てて絶対よ」のモーション。出だしと終わりをこの二つで挟む事で、作者コメントにある「私を見つけて。絶対よ。」というこの動画の主題を提示する。

↓つづく
posted by tlo at 02:08 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年12月09日

3A07のこと



やはりこの作品は、ニコマスに落とされたコロニーだったと思う。その革新性については様々なブログで語られているが、自分にとってエポックだったのは3Dアニメを「技術スゲー」で終わらせるのではなくあくまで「表現の手段」として扱っていることだ。「シロウト」だからとか「タダで作った」からなどでは決して無い。



これと同じ事は影絵BADAPPLEにも言える。カラーにして細部までモデリングすればもっと派手になるのは目に見えているこの作品が、シルエット表現に止まっているのは開発環境の制約だけでは無いと考える。この作品の胆は「動きの楽しさ」だ。モデリングにかかるであろう労力を自然なモーションの再現につぎ込み、トランジッションを全てモーフィングで行うことでこの楽しさは実現されている。この動きの楽しさは二次創作だとかの敷居どころか言語を超えてしまうレベルだったようで、海外のAMVサイトにも紹介された程。しかも、白と黒はBADAPPLEの歌詞のテーマだ。霊夢と魔理沙が太極図になる所なんか、もうかっこいいったらありゃしない。
3A07でもステージシーンは従来の切り貼り+AEエフェクトが使われているなど、手段にこだわった訳じゃない事が窺える(もちろんこちらも開発環境の制約はあったろうけど)。じゃあ、もう言うことは何も言うことは残ってないんじゃないかと思ったけれど、週マス2位悔しいので壮絶にdis MA66の時にしたように自分の中で相対化するためにあえて「まだ表現の余地は残っている」という点を指摘してみたいと思う。ジャブロー直撃だけは避けねばならないという感じで一つ。

↓つづく
posted by tlo at 20:00 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年11月07日

恋する視線

つかさPの新作がかわいすぎて生きるのが辛い。


つかさP作品

つかさPといえばパステルカラーと巧みな平面レイアウトを使ったカワイイ動画というイメージが強い。


音声ドリ音P 映像慈風P

丁度上がってきているこちらの作品と比べても同じギミックが使われていたりして、慈風Pの影響が強いのかなとは思う。が、つかさPの作品の可愛さは他にも理由があったりする。

↓つづく
posted by tlo at 20:12 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年10月27日

違和感


ユウシロウP作品

BPM合わせはダンスシンクロの基礎技術の一つだ。
だがBPM合わせをしただけではTunakM@sterのような奇跡でもない限り必ず「違和感」がでる。ダンスMADはこの違和感との戦いとも言える。


おっぺけP作品

カットを細かくし違和感を抑える「カットシンクロ」の最も洗練された例である。カットを消極的な手段でなく、積極的な武器にするおっぺけP。この習作はダンスMADの特徴といえる「身体性」を「感じる」以上に、「映像」として「見る」作品になっていると思う。


ユウシロウPの作品はカットが最小限で違和感が残っている。特に1:03辺りのHWGの振りは私は理解できなかった。が、打ち込みと違うバンドミュージックには揺らぎがあって、合わせれば合わせようとするほど、手をかければかけるほど逆に人為が目立って「違和感」になるのかもしれない。BPMに乗せるだけに止め、ずれたりぴったり合ったりする揺らぎに任せた方が逆にリアリティを増すのかも知れない...音楽の素養がないから実際この作品がそうなのかはわからないけど...誰か教えて!



ナンカンP作品

さらにいえば違和感を消すことが唯一の答えでもない。ナンカンPのカットは独特だ。キャリアを重ねていけばおっぺけPのようなカットをするようになるかも知れないが、彼の目指しているのはまた違うものじゃないかと感じてしまうのだ。
posted by tlo at 04:07 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年10月12日

お嬢様と別れ歌7


哀れな小羊P作品

ニコマスPVには「ループもの」と呼べるジャンルの動画が有る。
ゲームでは共に走り抜けてきたアイドルは、53週を終えるとPと共に積み重ねたスキルも記憶もリセットされる。ゲームシステムと言えばそれまでだが、1年過ごしてきたアイドルに別れを告げてきたその舌の根も乾かぬうちに「次こそは〜」などと言うゲームの中のPに自己を仮託できないプレーヤーは、自ら物語を紡ぎ始めた。


whoP作品

ゲームの中に2年後がある美希であれば、このような超克も可能だ。だが、伊織であればこうは行かない。伊織にはそのような「未来」は描かれて無く、彼女には常に「別れ」のイメージがつきまとっているからだ。これはMAで別れの歌ばかり歌った事が影響として大きい(別な影響は有りそうだけどここではこうしておく)。

哀れな小羊Pは、伊織を「別れを予感する者」から「破局を知る者」へイメージを膨らませた。破局の跡の荒野で、彼女は独り歌い踊る。識ったが故に輪廻を超越したと考えると唯識論みたいで興味深いけど、伊織は「悲しみに囚われて」いる。

さらに崩壊のシーンでは「0と1」という無機質な表現ではなく、極めて生々しいものになっている事から、あくまでこれは別れのイメージであり、

伊織の悪夢

と解釈してみる。


DSではアイドル達の「その後」が描かれている。そこには「あの夜」を超えた春香もいる。とにもかくにも、彼女たちはあてどない道を歩み出したのである。

↓つづく
posted by tlo at 05:56 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年09月30日

RidgerP3

#売られたケンカは買う......あ、すいません、すこしまけてくれませんか?

映画、あるいは演劇でも漫画でも絵画でもいいです。映像作品を見て何故人が感動するのか...とここまで大風呂敷広げるとアレなので、何故私はRidgerPの動画に感動するのか考えてみる。

私は物語のカタルシスと映像のスペクタクルがいっぺんに味わえるような映画が好きだ。「永遠の一瞬」に登り詰めていくドラマが好きだ。ベンハーとメッサーラの因縁が決裁される戦車戦。ありとあらゆる負い目を負って空に駆け上るマーベリックのドッグファイト。弟子アナキンを斬って捨てた師オビワンの慟哭。etc.etc.

RidgerPはストーリーPV作家としては認知されていない。が。明確なストーリーを語ったLove Power完結編暁の記憶があるように、彼の作品には背景設定が用意されている場合が多い。太陽のあずさの裏設定などは有名だ。

そして彼は、永遠の一瞬に最大のスペクタクルをたたき込む。

これが私にとってのRidgerP作品の「快」である。 ※1
例えば...

↓つづく
posted by tlo at 20:00 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年09月27日

セットとカメラ


カブキンP作品

RidgerPの新作は、カメラと構成は相変わらずの舌を巻くレベルだったけど、手放しで12点とか付けられない私はひねくれた信者だ。新作は、技術的にはわかむらPの系統にあるに違いない。

が、AEの「セット感」が拭えてない。

あえてこうしたのかもしれない。というか、演劇的なステージというイメージでそうしたのだろうと思うのだけれど、AEを使った3D技術ならやはりわかむらPが上を行くのである。


わかむらP作品

0:30辺り、画面の両端がぼけているのがわかる。これは恐らく、被写界深度の浅さを表現したものじゃないかなと思う...多分。

AEにおける3D表現(ニコマスでいう所のわかむらP路線)を突き詰めていけば、それはカメラ構造の知識に至ると考えている。そして、その考えに基づけばカブキンPの新作は、RidgerPを超えていると言わざるを得ない。

↓つづく
posted by tlo at 19:34 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年09月07日

魔法を解いて

映画もアニメも絵画もおよそ「絵」には共通の法則があって、それは漫画にも適用される。
こちらに紹介する本は、漫画における視線の力学を徹底的に分析したものです。

漫画をめくる冒険(

漫画を分析したものなので、「本」という紙を綴じたメディア特有の分析が主なのですが
こちらの著者の方は本を書くに当たって、映像関係の様々な本を読んで研究された様子。
なので、当然、動画についても十分に応用が利くというかトミノ本より役に立つかも。

で、関西にいく事になって、著者の泉さんにもお会いできて、いろいろお話を聞けました。そしてかねて疑問に思っていたこの動画を見てもらうことに。

リンP作品

「この動画がすごく遠く感じる」「何か物体として存在してるように感じる」「自分の目で見てる感じがしない」と、言葉にならない感情を抱いてしまうのは、なにか「仕掛け」があるはずなのだけれどそれが分からず、自分にとっては「魔法」としか思えない。この方なら分かるのではないかと見てもらったところ、明快な答えが返ってきました。

この動画に現れるアイドルは、絶対に視聴者と目が合わない。つまりアイドルと視聴者の視線が絶縁されている。

ダンスシーンはmidカメラ中心に構成されて、アイドルはカメラ目線にならない。アップ正面があったとしてもどこかそっぽを向いていたり、MHDで目が隠されてしまう。それが明確なのはラスト近くの4:51。春香さんがくるりと回って正面を向く前に、MHDに目が隠される。徹底されている。アイドルと目が合うのを「実感」することで視聴者は動画に没入するのだけれど、それは拒まれるのだ。
そして、唯一正面を向くのがコミュシーン。だがここもアイドルは視聴者を見ているようで、実は見ていているのは「リンP」だったりする。P名が「リンP」になっていて、つまり実況動画と同じ。視聴者が見ているのはプレイヤーである「リンP」の視線で、視聴者は「リンP」に同化してしまうのだ。

以上、お話で聞いたことを端折ったり、自分なりにまとめてみた。
そして比較されがちなこの動画についても、この視聴者の視線とアイドルの視線で説明が出来たりする。


わかむらP作品

この動画で春香さんが見ているのは画面の中に現れるプロデューサーであり、プロデューサーは春香を見返している。先に紹介した本によれば漫画には読者をキャラクターに感情移入させる仕掛けがあるのだけれど、この動画ではその仕掛けはなされていない。つまり視聴者は二人の状況を眺める形になる。
「自己言及」だったり「メタ視点」の動画は扱いが難しく、賛否両論を巻き起こすのは「GAME」でも起きたことだ。が、このわかむらPの作品においては、コメが大荒れするなどの反応は見られない。上記のように「外から眺める」形になってるのが「安全弁」で、この作品は「ショッキングなドキュメント」でなく「スリリングなエンタテーメント」に仕上げられているのが原因なのではなかろうか。


同じテーマであっても、表現手法が変われば、視聴者の反応も全く変わるのだ。

posted by tlo at 01:58 | TrackBack(1) | 動画紹介

2009年08月12日

やってくれた喃

見る専ブログ界隈で話題の時雨PのTigerEyes。それをDie棟梁PのTigerEyesと比較してみる試み。まず音楽的素養が全くないのを承知で、Tiger Eyes(以下、虎眼と略)という曲を分析などしてみる。
この曲で印象的なのは、「流れる」ようなストリングスの伴奏とバスドラが「刻む」ビートだ。もっと細かく聞いていくと、バスドラのビートの上にはスネア、ハイハット、パーカッションが複雑なリズムを打ち、ビートと一緒にベースがコードを進行し、伴奏も印象的なストリングスの他にアコースティックギター、シンセが奏でられている。ボーカル、ギター、ベース、ドラムで成立するバンドミュージックとは違う音の多層性は如何にもクラブミュージックだ。

そして千早は、この複雑に組み上げられた曲を歌い踊ることになる。

純粋に映像作品としてみたとき、Die棟梁Pの虎眼は完璧としか言えない。特に入りは絶妙で、静かなピアノから入るこの曲に、棟梁Pは視線を分散を図る。画面を分割し、次々動きながらカットインしてくる絵。0:24には千早の目が現れるが同時に右側で虎が飛び出してくるので、やはり視線は分散されてしまうのだ。0:30のパーカッションのリズムが始まると同時に見開かれる千早の目に釘付けになるのは、道理だ。そしてこの作品の主題が、千早=虎であることが明確に伝わる。
さらに棟梁虎眼は全体的に減速ダンスである。BPM123のこの曲に、エージェントやGMWなどの高速ダンスまでも使っているのは、当時借り物Pだった故の苦渋の選択だったかもしれないが、これが逆に曲のゆったりとした「流れ」を作っている。この「ゆったりとした流れの心地よさ」が棟梁虎眼の胆であり、さらに"Tiger Eyes"という曲の胆なのではなかろうか。
「シンクロはエフェクト」という言葉が「曲の視覚化」という意味ならば、これほどシンクロ率の高い作品はそうそう無いと思うのだ。

対して時雨虎眼はビートを「刻む」。使われているダンスも0:30からのポジティブが象徴するようにBPMに近しい、ビートを「刻む」ダンスである。はっきりといえば曲の視覚化という意味において、この曲でビートを刻むのは正解ではないだろう。事実、棟梁虎眼のようなダンスMADとしての心地よさは乏しいと言わざるを得ない。
では、時雨虎眼が棟梁虎眼に劣っているかと言えばそうではない。ニコマスは再生数とマイリス数で評価を争う映像品評会だけでは(そういう側面があるのは否定しないけど)決して無いからだ。
あくまで個人的な印象でしかないのだが、この作品は時雨Pの挑戦という側面が強いと感じる。千早の挑戦でなく、時雨Pの挑戦である。時雨Pは千早と相談してあれこれと演出プランを練ったというよりは、もう千早はこの曲を歌い踊れて時雨Pはそれをドキュメンタリーとして撮した。そんな印象だ。つまりTigerEyesという「曲のPV」ではなく「千早のPV」なのではなかろうか。
千早を表現しようとするならば、シンクロはエフェクト以上のものであるならば、「ダンスの身体性」は必須であろう。減速ダンスを使えば人が踊るダンスとしては不自然となる。そこに千早はいて、千早は等速のダンスで歌うのだ。

以上、あくまで個人的な印象である。が、ニコマスにおいてはP名システムがあって、動画には動画単体以上の別の意味が生じてくる。だから時雨虎眼は時雨Pとは不可分で、そういう文脈で読むべきなのだろうとそう思う次第。


Die棟梁P作品


時雨P作品
posted by tlo at 20:39 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年07月31日

初心者に薦める「ニコマス」

12時間ニコ生とか大きな動きがあって、ニコ動がテレビになってどうするんだろうとか疑問に思わないでもないけれど、いまこそ初心者向けの記事だろうと前向きに考えてみた次第。だけど基本作り手で偏ってるので、だったら思い切り自分の体験に引き合わせて考えてみた。


想定する人
ニコニコにアカウントを持っていて、ある一つのジャンルにはまりこんでいる。他ジャンルの動画はランキングで気になったものは見る。
つまり、この記事はそもそもニコニコのアカウントを持ってない人とかそもそもオタクサブカルチャーには無縁な人にはあまり有効じゃなかったり。

↓つづく
posted by tlo at 01:53 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年07月20日

イメージの転換


えびP作品。

宣伝のR(略)Pの言葉が全てで、死というネガティブなイメージがこの作品では「希望」になっていたりする。すごいなと思った。
posted by tlo at 21:36 | TrackBack(0) | 動画紹介

2009年07月12日

ループの超越

ニコマスには「ループもの」みたいなジャンルがあって、Pは「1年」というループを超克するために様々なアプローチを挑む。


リンP作品

その一年をニコマスで展開するというのは、多分時雨Pが先駆になると思う。ただリンPの一連のシリーズにはゲームのストーリーをなぞるとか、ゲームプレイ実況とか、そういうものとは一線を画す「重さ」を感じていた。雪歩と過ごした一年とその結末は納得が出来てしまうリアリティがあった。その重さの正体は分からないけれど、ループに意味を与える事でそれを乗り越えようとしたのだろうと思う。

ループものといえば春香さんがモチーフになる事が多い。その衝撃のEDから春香さんにその夜を越えさせようと、様々なPが様々な作品を作り上げている。にもかかわらずニコマス界隈で、春香さんがその夜を越えたという認識は未だに確立されていない。

一方、美希はゲームの中において既にループを超越していたりする。ラストコンサートでの記憶の喪失>復活はループを断ち切るモチーフであり、そもそも美希には「2年後」という明確なイメージまで示される。

そんな「ループの先」を明確にイメージできる美希のPが、他のアイドルの「2年後」をイメージしてみせたのが、これだ。
↓つづく
posted by tlo at 20:08 | TrackBack(0) | 動画紹介